探し求めるもの
「私の口説きのテクニックも錆び付いたかな・・・。」

エドガーからそう言われた時から、ティナは自分が普通の人とどこか違うことを意識し始めた。

その一つ目が、感情。

エドガーから口説かれた時も、普通の女性としての反応はおろか、口説かれていたことさえ気付かなかった。

買い物をしている時も、ベクタに同年代の女性がいなかったせいでもあるが、同年代の女性が興味を持つものに全く興味が湧かない。
品物を見て考えることといったら、実用的であるかないか、それだけだ。

二つ目が、先天的に魔法を使える自分。ベクタでも、そんな人間は一人としていなかった。
あの将軍セリスでさえも、人工的に魔法の力を植え付けられたらしい。

ロックやエドガーの前で魔法を使った時も、二人はあんなに驚いた表情で自分のことを見ていた。

エドガーはともかく、帝国から抜け、所属する団体のあても無いティナにとって、唯一仲間として認識していたロックに拒絶されると、ティナは本当の意味で孤立することになってしまう。

幸い、ロックはティナを拒絶するようなそぶりは見せず、むしろエドガーを説得するようなかたちでその場は収まったが、魔法の使用は、ティナの存在を脅かす結果となった。

自分と同じように、幼少期からベクタで育ったセリスとの出会い。
しかし、セリスは
ベクタで育ったのにもかかわらず、ある程度女性らしい考え方を持ち、常識も備わっていた。
恋愛をすることもできる。そして、たとえ一人でも生きていけるような、強い精神力と行動力。
ティナに欠けているものばかりだった。

今まで他人の行動にただ従い、その流に流れている自分。仲間がいないと、何も出来ない自分。
その時から、ティナは自分というものがいかに不安定な存在であるかを認識する。

そして、そんな中、ナルシェの幻獣に呼び起こされた、自分のもう一つの姿。
淡く光るその体は、自分がいかに人間とはかけ離れた存在か、ティナに思い知らさせた。

私は、人間でさえないの?

今まで出一番大きなショックだった。そういえば、自分の出生のことは覚えていない。
同僚に聞いても誰も教えてくれなかった。いや、むしろ誰も知らなかった。
そのうち、自分でもあまり気にしなくなり、いつしか忘れていた。

トランスしたとき、忘れ去られていた記憶がよみがえってきた。
父親が幻獣ということ、昔幻獣界にいたこと、そして、最後に思い出したのは、獣のような唸り声と、無数の悲鳴・・・・・・。

記憶がよみがえったことで、本当の自分に一歩近づけたという嬉しさは多少あったが、それ以上に、仲間が自分からかけ離れていく様で恐ろしかった。

しかし、その心配は無用のものであり、むしろティナにとって最高の機会であった。

幻獣と人間との掛け橋。

世界中でそれが出来るのはティナをおいて他にいない。

私は、私の存在は人の役に立つことが出来る!私にしか出来ないことが見つかった!

もう、ただのお荷物じゃない。
今まで迷惑をかけるだけだった自分が、これからは人のために何かをすることが出来る。
自分の存在理由が見つかった様で、ティナは嬉しさを抑えることが出来なかった。

その後、ティナはもう一つ、存在理由を見つけることになる。
モブリズの子供たちとの出会いである。自分のことを必要とする子供たち。
仲間を失い、生きる希望もなくしかけていたティナにとって、それは新たな存在理由となった。

ケフカを倒し、平和になったモブリズで、ティナには自分の存在理由を探す必要は、
もう無い。
CHIKO
2001年11月02日(金) 23時10分15秒 公開
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■作者からのメッセージ
ただ長いだけの文章ですみません!誤字も多いですが、読んでいただけれ
ば幸いです。どうしても、FFとの最初の出会いであるVIの話が書きたいものですの
で。これからも書いていくつもりですが、どうぞ読んでやって下さい。

この作品の感想です。
よかったっすよ。 まりえ ■2001年11月04日(日) 22時52分48秒
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