記録
ある晴れた日の昼下がり、モブリズはいつものように
子供たちの笑い声が聞こえていた。
それを見守る瞳。ティナだ。

ケフカを倒してからもう二年近く経とうとしている。
人々は新たな気持ちで生活を始め、あの忌まわしい 
記憶も忘れられようとしていた。

(あれからもう二年も経つんだ・・・)

子供たちの笑い声を聞いていると、ケフカが世界を
恐怖で震え上がらせていたことなど、全部夢の出来
事のように思えてくる。

事実、モブリズの町はフィガロ王国の援助や、ケフカに町を破壊された難民たちの受
け入れによって、世界が崩壊する前と同じような町並みをのぞかせている。

しかし、ティナはその全てを夢の出来事にはしたくなかった。ケフカを倒す旅をして
いなければ、今こうして自分は子供たちと暮らすことも無かっただろうし、あの素晴
らしい仲間たちに出会う事も無かっただろう。

そして今日、ティナは楽しげに遊ぶ子供たちよりもっと嬉しそうな顔をしていた。

「ママ、今日はどうしてそんなににこにこしているの?」

と、子供の一人が聞いてくる。

「今日はね、ママとママのお友達が初めてであった日なの。だから、お友達と皆で
パーティを開くのよ」

そう、今日はナルシェでロックと出会い、彼女の冒険が始まった記念日である。嬉し
そうに、ティナは自分宛に届いた一通の手紙を差し出した。

「いいなー。僕も行きたいなー、パーティ」

手紙とティナの顔を交互に見ながらうらやましそうに見つめる子供には悪かったが、
今日は子供たちをディーンとカタリーナに任せて、思いっきり仲間たちと楽しむつも
りだった。夜を待ちきれないティナの顔には、まるで子供のような笑みが浮かんでい
た。

夕方、飛空挺が到着した。

待ちに待った友との再会、フィガロ城を使ってのパーティは、豪勢なものだった。
仲間との談笑に少しの休憩を取り、ティナが外で夜風にあたっている時、ロックが
やって来た。

「楽しんでいるかい?」

にこやかに話し掛けてくるロックは、二年前とほとんど変わりなかった。
ロックはティナの隣に来ると、一冊の本を手渡した。少し汚れたその本は、ティナの
日記だった。ロックに勧められて書き始めたものだ。

「ガレキの塔が崩壊した時になくしたと思ってたけど、ロックが持っていたのね」

ティナは懐かしそうにその日記を読んでいった。仲間たちとの出会い、旅の記録、訪
れた町の話がたくさん書かれている。

「あんなに素晴らしい旅の唯一の記録なんだ。まさに俺たちの宝だよ。トレジャーハ
ンターとしては、絶対に手放すわけにはいかなかったからさ」

ロックが胸を張って言う。

そう、確かにそれはかけがえの無い宝物だ。読んでいるだけで、あの頃の自分や仲間
たちが過ごした時間の大切さがわかる。

「ロック。これ、貰ってもいいの?」

「もちろんさ。もともとティナの日記だろう?俺はただ預かっていただけさ」

ロックはにこやかに言った。

「ありがとう、ロック。今日ここに来て、本当に良かった。この本、大事にするか
ら」

嬉しそうに、ティナは本を抱きしめる。それにうなずくと、ロックはパーティ会場の
方を指差して言った。

「さ、いつまでもこんな所にいたら風ひくぜ。中に入ろう」

「ええ!」

こうして、パーティの夜は更けていった。
CHIKO
2001年09月22日(土) 01時14分48秒 公開
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この作品の感想です。
ロックとかティナの感じが、すっごくわかる!!(上手い)最高!! ガイツ ■2001年10月09日(火) 20時45分51秒
率直な意見を言わせて頂きますと、題材はいいです。が、しかし、文章力がやや不足。また、イベントをもっと増やす等して、内容を豊富にしてみましょう。 栄光のK・O・T・A・N・I ■2001年09月24日(月) 21時38分06秒
素晴らしいです。 Lucy ■2001年09月22日(土) 18時38分18秒
いいですねえ。 天野ゆきの ■2001年09月22日(土) 17時30分27秒
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