罪と罰


その日、ガスト博士、宝条、ルクレッツィア、そして私はニブルヘイムを訪れていた。
まだ私はタークスのガンマンをしていた時代・・・

そう・・・20年ほど前の話だ。




4人はニブルヘイムの奥の奇妙な屋敷に入っていく。
「ここは・・・何なのですか?」
「昔は神羅が使っていたようだが、今は廃墟になっている。ニブルヘイムの奴らは神羅屋敷とか呼んでいるようだがな」
「このような所に何があるのですか?」
「今にわかる・・・」
3階の部屋に入っていく4人。
「ここだな・・・」
宝条は隠し扉のような所をこじ開け、内部の螺旋階段を下りていく。
「お前ら2人は外で待っていろ」



外は晴れわたっていた。

「大きな給水塔だな、ルクレッツィア」
「そうね・・・」
「どうしたんだ?」
「・・・・・」
「ルクレッツィア?」
「え・・・?」

「ルクレッツィア・・・?」


その頃からだった、ルクレッツィアの奇妙な行動は・・・







ニブルヘイム入り口

「ルクレッツィア・・・」
「え・・・?」
「俺は・・・」
「・・・・・」
「お前を・・・好きだった・・・ずっと・・・」
ルクレッツィアは黙り込む。
「ごめんなさい・・・」
ルクレッツィアは握られた手を振り切って去っていった。
「ルクレッツィア!」





数日後、私は一人でニブルヘイムを訪れた。
「ルクレッツィア・・・?」
目の前には宝条と抱き合っているルクレッツィアの姿があった。
「何故だ・・・」
私は声をかけようとしたが・・・かけることは出来なかった。




   

    彼女が幸せならば私は構わない・・・






数日後の神羅屋敷地下室

「反対だ!何故そんな人体実験を!」
「彼女も科学者、私も科学者だ」
「ルクレッツィア!」
ルクレッツィアは首を振る。
「そんな・・・」
私は無我夢中で外に飛び出した。
「あ・・・」
「ふっ、放っておけ」
「・・・・・・」




しばらくたって、ルクレッツィアに赤ん坊が生まれた。
その赤ん坊の名は・・・・・




   
    セフィロス・・・






神羅屋敷地下室

「一体ルクレッツィアに何をしたんだ!宝条博士!」
「クックック・・・」
「日に日にルクレッツィアはやつれていくんだ!」
「所詮実験材料だ・・・」
「何!」
「しかしあの女があんなに役立ってくれるとはな・・・」
「一体何をしたんだ!」
「ジェノバ細胞を埋め込んでやった、そしてあの素晴らしい作品を生み出してくれ
た」
「・・・ジェノバ細胞?」
「クックック・・・ガストもバカな奴だ、素直に古代種の生き残りを明け渡せば死な
ずに済んだものを・・・」
「ガスト博士を殺したのか?!」
「クックック・・・クックック・・・」
「宝条・・・」
「私は天才だ!私の頭脳がこの世を変えるのだ!」
宝条には私の声は聞こえていないようだ。
私は宝条が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「お前は・・・一体・・・」
この時、私の目の前にいた宝条は人間の目をしていなかった。
まるで悪魔が、乗り移っているようだった・・・。


「とにかく!ルクレッ・・・・・」

風船の割れたような音がした。
全身が一瞬熱くなった。
自分の体からは赤い液体が溢れ出していた。
「な・・・何を・・・」
目の前には銃を構えた宝条が見えた。

「お前は知り過ぎだ、お前も私の実験材料にしてやる。光栄に思え。」
宝条は悪魔のような高笑いをしたまま、その場を立ち去った。
「ル・・・ク・・・・・」

宝条の笑い声が耳に残ったまま、私は息絶えた。









「うっ・・・」

目を開けたその先には、この間と変わらない神羅屋敷の姿があった。
「生きて・・・いるのか・・・」
手には手紙が握り締めてあった。
「これは・・・?」


『私がバカだった。
宝条の口車に乗せられ、私は宝条に人体実験を行わせてしまった。 
目が覚めると私の体は青白かった。
宝条が私の体にジェノバ細胞という恐ろしい細胞を埋め込んだの・・・。
そして、私と宝条の間に子供が出来た。
すぐ宝条は私のもとから去った。
「これで世界は私のものだ」と、高笑いをしながら・・・。
私の犯した罪はとても許されるものではないとわかったの。
でも、これだけはわかって・・・。私の愛した人は、あなただけ・・・。
こんな私を愛してくれたあなたに言いたかった・・・

       
       ありがとう・・・ヴィンセント
                        from ルクレッツィア 』
    


      
「ルクレッツィア・・・」
ヴィンセントは流れる涙を必死にこらえていた。

涙は一滴、手紙に落ちた。
「!?」
その涙は真っ赤に染まっていた。
「なっ・・・何!」
手紙を持っている手は人間の手ではなかった。
「バカな・・・これは・・・」
体がどんどん熱くなっていく。
「あ・・・あ・・・」

「ぐっ、ぐあああああああああああああ!」

ヴィンセントは大きく目を見開いた。
その目は血に染まったように真っ赤になっていた・・・・・。









   
     
     この身体は私に与えられた罰・・・ 





私は、止める事が出来なかった。

ガスト博士や宝条、そして・・・ルクレツィア。

ただ見ていることしか出来なかった・・・。

この身体が幸か不幸か、そんなことは関係ない。

私はこの時点で、宝条と同じ悪魔になりすがっていた。



 
     

    

    
     これは私の罪なのだ。






2号
2001年08月29日(水) 22時38分03秒 公開
■この作品の著作権は2号さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ヴィンセントの過去を詳しく書いたつもりです。
前回より個人的に上手くいったと思います。
ゲームとは多少矛盾してますけどすみません。
でも…暗い話ですね(^^;

この作品の感想です。
とてもよい作品です! 巫女 ■2001年12月08日(土) 19時26分19秒
ヴィンセントだいすき!かっこいい! ガイツ ■2001年10月09日(火) 20時54分11秒
よい作品ですね!! 天野 ゆきの ■2001年09月04日(火) 23時53分34秒
とてもかっこよくてよかったです! 浪速のロッキー ■2001年09月02日(日) 22時11分14秒
戻る
[ 感想記事削除 ]
PASSWORD